骨上げの儀式では、ただ無作為にご遺骨を拾うのではなく、定められた順番に従って行われるのが一般的です。その順番は、多くの場合、足元の骨から始まり、徐々に上半身へと移り、最終的に頭蓋骨を納めるという流れを辿ります。この「下から上へ」という一見単純な流れにも、故人様への深い敬意と、来世での安寧を願う気持ちが込められています。まず足の骨から拾い始めるのは、故人様が「あの世でも、再びご自身の足でしっかりと大地に立てますように」という願いの表れです。肉体を失った後も、その魂が地に足をつけ、迷うことなく進んでいけるようにという、残された家族からの力強いエールなのです。そこから、すね、膝、太もも、そして腰骨と拾い上げていきます。これは、生前の人間の骨格を再構築していくような作業であり、故人様が生きていた頃の姿を偲び、骨壷の中でも安らかな体勢でいられるようにという配慮の表れでもあります。次に、背骨や肋骨、腕の骨へと移ります。参列者全員が順番に、少しずつご遺骨を拾い、骨壷に納めていくこの過程は、故人の身体を皆で分かち合い、その存在を心に刻むための共同作業です。そして、儀式の終盤には、歯の骨を拾うことがあります。歯は、食事や会話といった「生きる喜び」に直結する部分であり、これを拾うことで、故人が来世でも食に困らず、健やかに過ごせるようにという願いが込められています。最後に、最も重要な部位である頭蓋骨(お顔の部分)を、喪主をはじめとする近親者が納めます。そして、喉仏の骨をその上に乗せるようにして、儀式は締めくくられます。この一連の順番は、単なる手順ではありません。それは、故人様への最後の恩返しとして、その魂の安らかな旅立ちを祈り、来世での幸福を願う、残された家族からの無言の手紙であり、深い愛情の物語なのです。
拾う骨の順番に込められた故人への願い