父が亡くなったという知らせは、古いアパートの一室で、たった一人で受け取りました。父も私も、長年生活保護のお世話になっていました。年金だけでは暮らせず、蓄えなどもちろんありません。悲しみに暮れる間もなく、私の頭をよぎったのは「葬儀のお金なんて、どうしよう」という、あまりに現実的な不安でした。途方に暮れて担当のケースワーカーさんに連絡すると、「大丈夫ですよ、葬祭扶助という制度がありますから」と、落ち着いた声で教えてくれました。すぐに福祉事務所へ向かい、事情を説明して申請手続きを行いました。そして、ケースワーカーさんから紹介された、福祉葬に慣れているという葬儀社に連絡を取りました。葬儀社の担当者の方は、私の不安な気持ちを察してか、非常に丁寧に、そして優しく説明してくれました。「葬祭扶助で行うお葬式は、火葬だけでお見送りする、直葬という形になります。お通夜や告別式はできませんが、故人様を敬う気持ちは、決して変わりませんからね」。その言葉に、どれほど救われたか分かりません。当日、病院から直接火葬場へ向かう霊柩車に、私一人だけが同乗しました。火葬場の小さな安置室で、棺の小窓から見える父の顔と最後の対面をしました。たくさんの花で飾られた祭壇も、大勢の弔問客もいません。でも、静かな空間で、誰に気兼ねすることもなく、父に「ありがとう」と伝えることができました。炉の前に立ち、静かに手を合わせる。本当に短い、あっけないほどシンプルなお別れでした。でも、父らしいな、とも思いました。世間体や見栄とは無縁だった父。きっと、こんなふうに静かに旅立つことを望んでいたでしょう。公的な制度と、葬儀社の方の温かい心遣いのおかげで、私は無事に父を見送ることができました。費用はかからなくても、感謝の気持ちは、何ものにも代えがたいものでした。
父の葬儀で葬祭扶助を利用した私の体験談