骨上げの儀式で最も特徴的とも言えるのが、二人一組でご遺骨を拾うという作法です。一つのご遺骨を、二人がそれぞれ持った箸で挟み上げ、骨壷へと納める。この独特な所作には、日本人が古来から育んできた死生観と、故人への深い思いやりが凝縮されています。この作法の由来として最も広く知られているのが、「箸渡し(はしわたし)」と「橋渡し(はしわたし)」をかけた語呂合わせです。故人様の魂が、この世(此岸)からあの世(彼岸)へと渡る際に通るとされる「三途の川」。その川に架かる橋を、残された私たちが力を合わせて架けてあげよう、そして無事に渡りきれるように手助けをしてあげよう、という深い祈りがこの行為には込められているのです。二人で力を合わせなければご遺骨をうまく掴めないこの共同作業は、故人を送るという一つの目的のために、遺族が心を一つにする象徴的な行為でもあります。また、この「箸渡し」は、日常の食事の際には「嫌い箸」としてタブー視されている行為です。食べ物を箸から箸へと渡すことは、この骨上げの儀式を連想させるため、縁起が悪いとされています。つまり、骨上げの儀式は、日常とは切り離された、死という非日常の世界に属する神聖な行為であることを、この作法が明確に示しているのです。さらに別の説として、古くからの神道の考え方に基づいているという解釈もあります。神道では、死は「穢れ(けがれ)」と捉えられることがあります。そのため、一人が直接ご遺骨に触れるのではなく、二人で箸を介して間接的に触れることで、その穢れを分かち合い、祓い清めるという意味合いがあるとも言われています。宗教的な解釈は様々ですが、根底に流れるのは、一人では成し遂げられない「故人を送る」という大事業を、皆で支え合い、心を込めて行うという、日本の共同体文化に根差した温かい思いやりの精神なのです。