火葬が終わり、ご遺族が故人様と最後に対面する儀式、それが「骨上げ(こつあげ)」または「拾骨(しゅうこつ)」です。これは、火葬されたご遺骨を骨壷に納める、葬送儀礼における極めて重要で神聖な儀式です。単にご遺骨を容器に移すという作業ではなく、その一つ一つの所作には、故人様を敬い、無事にあの世へと送り出すための深い意味と祈りが込められています。儀式は通常、火葬場の収骨室で行われます。火葬炉から出された台の上には、白く清められたご遺骨が生前の姿を留めるように整えられています。まず、喪主から順に、故人様と血縁の深い方々がご遺骨を囲むように立ちます。そして、係員の指示に従い、二人一組で一対の竹製の箸(片方が竹、もう一方が木で作られている場合もあります)を持ち、一片のご遺骨を拾い上げ、骨壷へと納めていきます。この時、一人がご遺骨を拾い、もう一人が箸でそれを受け取って骨壷に納める「箸渡し」という作法が取られることもあります。拾うご遺骨の順番にも意味があり、一般的には足元から始まり、腕、腰、背骨、肋骨、歯、そして最後に頭蓋骨というように、下から上へと向かって拾い上げます。これは、故人様が骨壷の中で再び立ち上がり、安らかに成仏できるようにという願いが込められていると言われています。最後に、喉仏(のどぼとけ)と呼ばれる第二頸椎の骨を、喪主と最も縁の深い方が納めるのが通例です。この喉仏の骨は、座禅を組んだ仏様の姿に見えることから、特に神聖視されています。一連の儀式は、粛々と、そして静かに行われます。ご遺族が、故人様の「死」という現実を物理的な形で受け入れ、悲しみを乗り越えていくための重要なプロセス(グリーフワーク)の一部でもあるのです。この儀式を通じて、私たちは故人様の生きた証に触れ、感謝と共に最後の別れを告げるのです。