近親者の葬儀において、もし自身が「喪主」を務めることになった場合、その責任と役割は、単なる参列者とは比較にならないほど重く、多岐にわたります。そして、それに伴い必要となる時間も、通常の忌引き休暇の日数では到底足りないというのが、多くの喪主経験者が直面する厳しい現実です。一般的な参列者であれば、お通夜と告別式の2〜3日間を中心に休暇を取得すれば、社会的な務めを果たすことができます。しかし、喪主は故人が亡くなられた直後から、葬儀が終わった後まで、息つく暇もなく動き続けなければなりません。まず、逝去直後には、医師からの死亡診断書の受け取り、葬儀社との打ち合わせ、寺院など宗教者への連絡、親族への訃報連絡といった緊急の対応に追われます。葬儀の準備が始まれば、日程や会場の決定、祭壇や棺の選定、返礼品の準備、弔辞の依頼、そして何よりも挨拶の準備など、決断すべき事項が山のようにあります。葬儀当日も、参列者への挨拶や対応に追われ、心静かに故人を偲ぶ時間はほとんどありません。そして、葬儀が終わった後も、各種手続き(死亡届、年金、保険、各種名義変更など)や、香典の整理、香典返しの手配、そして四十九日法要の準備など、やるべきことは山積しています。例えば、父母が亡くなった場合の一般的な忌引き休暇が7日間程度だとすると、これらの全てをその期間内に終えることは、物理的にも精神的にもほぼ不可能です。そのため、もし自身が喪主を務めることになった場合は、忌引き休暇を申請する最初の段階で、直属の上司に「喪主を務めることになりましたので、通常の忌引き休暇に加えて、有給休暇を〇日ほど連続で取得させていただきたいと考えております」と、正直に事情を説明し、相談することが極めて重要です。喪主という大役を担うことへの理解を求め、早めに長期休暇の許可を得ておくことが、故人を滞りなく、そして心から見送るための、何よりも大切な準備となるのです。
喪主を務める、通常の忌引き休暇では足りない現実