骨上げ(拾骨)の儀式は、日本の葬送文化における共通の儀式と思われがちですが、実はその具体的な作法や考え方には、地域によって驚くほど大きな違いが存在します。その最も顕著な違いが、拾い上げるご遺骨の量です。一般的に、関東を中心とした東日本では、ご遺骨の全てを骨壷に納める「全収骨(全骨拾骨)」が主流です。そのため、ご遺骨が全て収まるように、比較的大きな骨壷(7寸、直径約21cmが標準)が用いられます。一方、関西を中心とした西日本では、喉仏や頭蓋骨、歯など、主要な部分のご遺骨のみを拾い上げる「部分収骨(部分拾骨)」が一般的です。拾い上げるご遺骨の量が少ないため、骨壷も小さく(3寸〜5寸程度)、残りのご遺骨は、火葬場や提携する寺院などによって合同で供養されることになります。この違いの背景には、歴史的な理由があると言われています。明治時代に政府が土葬を禁止し、火葬を推奨した際、それまでのお墓の大きさを前提としていた西日本では、大きな骨壷を納めるスペースがなかったため、部分収骨の文化が定着したという説があります。また、仏教の考え方の違いとして、ご本山への分骨を重視する宗派が多い西日本では、一部を手元に残し、残りを本山や共同墓地に納めるという考え方が根付いていたとも言われています。この他にも、地域によってはさらにユニークな風習が見られます。例えば、北海道の一部では、ご遺骨を粉骨して小さな骨壷に納めることがあったり、沖縄では、かつての風葬の文化の名残から、非常に大きな骨壷を用いる地域もあります。また、箸の持ち方や拾う順番にも、その土地ならではの細かな違いが存在します。もし、ご自身の出身地とは異なる地域の葬儀に参列し、骨上げの儀式に立ち会う機会があれば、その作法の違いに戸惑うかもしれません。しかし、その違いこそが、日本の各地域が育んできた多様で豊かな死生観の表れなのです。