四十九日法要に持参する香典は、その中身だけでなく、それを包む香典袋の選び方と書き方にも、守るべき大切なマナーがあります。特に、表書きは葬儀の時とは異なるため、注意が必要です。仏教では、故人の魂は亡くなってから四十九日間、この世とあの世の間を旅し、四十九日目に成仏して仏様になると考えられています。そのため、まだ霊としてこの世にいるとされる葬儀の際には「御霊前」という表書きを用いますが、成仏した後である四十九日法要以降は「御仏前(ごぶつぜん)」または「御佛前」とするのが正式なマナーです。この違いは、故人様の状態に対する仏教的な理解を示すものであり、非常に重要なポイントです。ただし、浄土真宗のように、亡くなるとすぐに仏になる(即身成仏)と考える宗派では、葬儀の時から「御仏前」を用います。もし宗派が不明で不安な場合は、どのタイミングでも使える「御香典(ごこうでん)」や「御香料(ごこうりょう)」という表書きを選ぶと良いでしょう。水引は、葬儀の時と同様に、黒白または双銀、地域によっては黄白の「結び切り」のものを選びます。「結び切り」は一度結ぶと解けないことから、「不幸を繰り返さないように」という願いが込められています。表書きの下には、自分のフルネームを薄墨ではなく、通常の濃い墨の筆ペンや毛筆で書きます。四十九日も経ち、ご遺族の悲しみも少しは癒えたであろうという配慮から、濃い墨を使うのが一般的とされています。夫婦連名で出す場合は、中央に夫の氏名を書き、その左側に妻の名前のみを記します。会社関係で複数名で出す場合は、右から役職の高い順に名前を書いていきます。中袋の書き方は葬儀の時と同様で、表面に包んだ金額(金壱萬円など)、裏面に住所と氏名を丁寧に記入します。これらの細やかな作法を守ることが、故人様への敬意とご遺族への深い思いやりを伝えることに繋がるのです。