突然の訃報に接した際、社会人として仕事との兼ね合いを考えなければならない状況は、誰にでも訪れる可能性があります。このような時に、故人様とのお別れに専念するために設けられているのが「忌引き休暇(きびききゅうか)」です。これは一般的に「慶弔休暇(けいちょうきゅうか)」の一部であり、従業員の近親者が亡くなった場合に、葬儀への参列や喪に服すために取得できる特別な休暇制度を指します。まず、最も重要な点として理解しておくべきなのは、この忌引き休暇は労働基準法で定められた「法定休暇」ではないということです。法律で取得が義務付けられている年次有給休暇とは異なり、忌引き休暇は会社が任意で設ける「法定外休暇」に分類されます。つまり、制度の有無、取得できる日数、そしてその間の給与が有給か無給かといったすべての条件は、それぞれの会社が定める「就業規則」によって決定されます。したがって、いざという時に慌てないためにも、普段から自社の就業規則や福利厚生に関する規定を確認しておくことが非常に大切です。一般的に、多くの企業では福利厚生の一環としてこの制度を導入しており、取得できる日数は故人様との続柄(関係性)によって細かく定められています。例えば、最も関係の深い配偶者であれば10日間、自身の父母であれば7日間、子であれば5日間、兄弟姉妹や祖父母であれば3日間といったように、関係性が近いほど日数が長くなるのが通例です。また、配偶者の父母(義父母)や兄弟姉妹といった姻族についても、血族に準じた日数が設定されていることがほとんどです。この制度は、従業員が深い悲しみの中で社会的な責任を果たし、心を整理するための時間と機会を保障するという、企業の重要な役割の一環でもあります。もしもの時に、安心して故人を偲ぶためにも、まずは自社の制度を正しく理解することから始めましょう。
もしもの時に備える忌引き休暇の基本