近年、特に家族葬が増える中で、ご遺族から「香典・供花・供物は固くご辞退申し上げます」という意思表示をされるケースが増えてきました。これは、参列者に気を遣わせたくない、香典返しの手間を省きたい、あるいは故人の遺志であるなど、様々な理由によるご遺族の配慮です。このような場合、参列者としては、その意思を尊重することが何よりも大切なマナーとなります。無理に香典を受付で渡そうとすることは、かえってご遺族に負担をかけ、困らせてしまうことになりかねません。では、香典という形を取らずに、どのように弔意を伝えれば良いのでしょうか。まず、最も大切なのは、法要に参列し、心を込めて手を合わせ、故人を偲ぶことです。あなたの存在そのものが、ご遺族にとっては何よりの慰めとなります。もし、何か形として気持ちを表したい場合は、「御供物(おくもつ)」として、日持ちのするお菓子や果物、故人が好きだった飲み物などを持参するという方法があります。ただし、これも事前にご遺族に確認を取るか、あまり大げさにならない程度のものを選ぶ配慮が必要です。また、後日、ご遺族が少し落ち着かれた頃に、お悔やみの手紙を送るのも非常に丁寧な方法です。手紙であれば、ご遺族も自分のペースで読むことができ、心の負担になりにくいでしょう。手紙には、故人との思い出や感謝の気持ち、そしてご遺族の健康を気遣う言葉などを綴ります。あるいは、親しい間柄であれば、後日改めてご自宅に弔問に伺い、お線香をあげさせていただくだけでも、弔意は十分に伝わります。香典はあくまで弔意を伝えるための一つの手段に過ぎません。その手段が閉ざされたとしても、故人を悼み、ご遺族を思いやる方法は他にもたくさんあるのです。ご遺族の気持ちに寄り添い、その意向を尊重する姿勢こそが、最も尊い弔いの形と言えるでしょう。